好きな人

学校生活が慣れてきた頃、同じクラスに好きな男の子ができた。名前はナツキくん(仮名)。

 

ナツキくんはイケメンの小柄な子でサッカー部。普段はクラスのムードメーカー的な存在で、いつも面白いことをしていたり、おちゃらけた発言をしたりと、明るい人だった。

けどふとした瞬間に、陰のある雰囲気を出すこともあって、ミステリアスなところもあった。

 

私は、みんなを明るくするナツキくんが大好きだったし、陰があるところもなんだか魅力的に感じていた。

 

 

そんなある日、ナツキくんから急に呼び出された。

まさかの、ナツキくんから告白されたのだ。

私はとても嬉しく、すぐOKした。

 

ナツキくんと付き合い始めてすぐ、顔の広いナツキくんは、クラスの子たちや他のクラスの仲良い子たちに、「りなと付き合ってるから」と報告しまくっていたので、私のことを知らない子たちからも、名前と顔を覚えられてしまっていた。少し恥ずかしかった。

 

付き合い始めてから知ったが、ナツキくんはとても嫉妬深い人だった。

私が他の男の子と喋っているだけで、すぐ不機嫌になり、話しかけても無視されたりした。

お互い部活をしていたので、部活終わりは一緒に帰るのが日課になった。というか、ほぼ一緒に帰るよう強制されていた。

 

2人でいると、ナツキくんはよく家の話をしていた。ナツキくんは一人っ子で、私と同じ母子家庭だったので、いつも家では一人なんだと言っていた。

私との関係に関しては、「本当は嫉妬もしたくないし、りなとずっと一緒にいなくても強くなれるようにしたいのにごめん」とよく言っていた。寂しがりやなんだと思った。

 

ナツキくんはお手紙もよくくれた。

ポストイットでくれたり、便箋でくれたり。

とにかくほぼ毎日手紙をくれた。

ナツキくんの字は、とても丁寧で、習字の見本のような綺麗な字だった。

 

 

ナツキくんと付き合っていた日々は、とても刺激的だった。というか、嫉妬深くて束縛がひどいと思えば、急に優しくなったり甘えたり謝ったりしてきて、なんだかナツキくんの手のひらで踊らされてるような日々だった。

 

付き合って3か月ほど経った頃、ナツキくんと仲良しのサッカー部の子、谷山くん(仮名)が、部活帰りに私とナツキくんと一緒に帰りたいと言ってきたので、一緒に帰ることになった。

谷山くんとも同じクラスなので、ナツキくんと一緒に教室でお喋りすることもよくあった。

 

私と谷山くんは途中から帰る方向が一緒になるので、ナツキくんとは途中で別れた。

私と谷山くんが2人で帰ることに、ナツキくんはかなり不機嫌になっていたが、谷山くんがなだめてくれて、どうにか解散できた。

 

谷山くんと2人きりの帰り道。

「ナツキの相手、大変でしょ。嫌にならない?」

と聞かれた。

正直、振り回されてるなとは感じていたが、好きな気持ちに変わりはなかったので、「大丈夫だよ」と答えた。

 

そのあと他愛のない話をしたあと、谷山くんの好きな人の話になった。

「俺にも好きな人がいる。でもその子は俺の親友と付き合ってる。俺の方が幸せにできる自信がある」と言われた。

最初は誰のことを言ってるのか分からなかったが、「今、その好きな子と一緒に帰ってる」と言われて、自分のことだと気づいた。

 

谷山くんの気持ちは素直に嬉しかったが、丁寧にお断りした。

 

 

3人で帰ってからしばらくして、ナツキくんに廊下に呼ばれた。

廊下には他の友達たちもたくさんいたのだが、そこでいきなり、「もうりなとは付き合えない。別れよ」と言われた。周りにいた友達たちもびっくりしていた。

 

私は何がなんだかさっぱり分からず、「なんで?納得できない」と言ったものの、その後全く喋ってもくれず、目も合わせてくれなくなった。

 

別れを告げられた次の日からは、急にいろんな友達に私の悪口を言われた。

私がナツキくんの近くで他の友達と喋っていると、私に聞こえるように、

「あいつムカつく」

「死ねばいいのに」

「チッ(舌打ち)」「うざ、男たらしが」

と色々言われたりもした。

 

なんでそんなこと言われないといけないのか、原因がさっぱり分からなかった。

次第に私も、悪口ばかり言うナツキくんに対して嫌気がさしてきて、ナツキくんの悪口が聞こえてきたら反抗するようになった。

 

一体何が原因だったのか、結局知ることはなかった。